何かが始まる前には、必ず沈黙がある。言葉を選び、視線を避け、余計なことばかり考える時間。どじろーのこのシリーズは、関係が確定するその前に漂う空気を丁寧にすくい取る。
派手な出来事は少ない。けれどその分だけ心は忙しい。
どじろーの陰キャ同士の付き合う直前が一番エロいよね

タイトルは「陰キャ同士の付き合う直前が一番エロいよね」。サークル名はどじろー。
物語は始まる前が好きだという人へ。告白も約束もない、その瞬間の揺らぎに胸が動くならこの一冊はきっと合う。
近づいた距離がかえって不器用にする
共通の趣味が繋いだふたりは、ある約束をきっかけに互いを強く意識し始める。日常は続いているのに、言葉が噛み合わない。周囲の何気ない一言が、胸の奥で増幅される。
翌日、僕と天野の間には冷たい沈黙の隔たりが敷かれた。教室で目が合っても、僕らはすぐに視線を逸らす。ふとした時間に訪れるその沈黙が、僕たちの関係をじわじわと裂くのを感じていた。だが、教室の片隅という名の密室で僕たちは再び互いの性器を受け入れた。
童貞と処女という古い皮膜を脱ぎ捨てた僕たちの肌触りには、少しだけ勇気が混じっていた。天野は、最後まで制服を脱がなかった。それは、彼女が「学校での性交」という行為を、彼女自身の意識のフィルターで制御するための、ささやかな防御線だったのだろう。
硬い床の感触と、衣擦れの音。そのすべてが、記憶の中で異常に強調され、あの夜の僕たちを、忘れられない、ある種の強迫観念へと変えていった。
視線や間合いで感情を語る。確定しない関係だからこそ生まれる緊張が、静かにしかし確実にページをめくらせる。



