世界が足早に通り過ぎていく中で、僕と冬花だけが、浪人生という静止した時間の中に取り残されていた。彼女は可愛く、模試の判定も僕とは対照的にいつも好調で、同級生なのにどこか距離を感じさせる「敬語」を崩さない。
なぜ彼女が僕の隣にいるのか、その理由を見失った僕は、自分の不甲斐なさに耐えかねて別れを切り出そうとした。それは、自分を守るための、ひどく臆病な選択だった。
ゆりしましろのふたり足踏み

タイトルは「ふたり足踏み」。作者名はゆりしましろ。
脱ぎ捨てられた不安とゴム越しに伝わる「慰め」の真実
「彼女には、落ち込んだ時《慰めて》と言うんですよ」
その言葉と共に彼女が示したのは、清楚な佇まいからは想像もつかない、ずっと隠していたえっちな下着に包まれた身体だった。別れを阻むように、必死に僕を求めてくる彼女の熱。それは言葉や数字では決して埋めることのできない、圧倒的な肯定としての誘惑だった。
下着を着用したままの、不器用で、それでいてひどく濃密な交わり。ゴム越しに伝わる微かな体温と、ショートヘアの隙間から覗く彼女の真剣な瞳。僕たちは「浪人」という不安定な足踏みを続けながらも、この一瞬だけは、互いの肌を通じて確かに存在していることを確かめ合う。ゆりしましろが描く、少しだけ切なくて途方もなく愛おしい、ふたりだけの冬の記録。
誰かと比べられる日常に疲れ、ただ一人の体温に救われたい君に送りたい。劣等感の果てに辿り着いた、秘められた下着と純粋な情愛の形を、その目で確かめてほしい。



