夜の校舎というのは、不思議だ。誰もいないはずなのに、壁の向こう側で誰かが深呼吸しているような気配がある。
この作品は、その静寂のなかでふたりの大人がゆっくりと溶けあっていく物語だ。孤独を抱えた者同士だけが共有できる、あの柔らかな熱に満ちている。
百済児廿日の露凝りて白色

タイトルは「露凝りて白色」。サークル名は百済児廿日。
夜の静けさに沈みこみたい人へ。誰にも言えない孤独と欲を、そっと抱きしめてくれる作品だ。
激しさより密度を求める読者にこそ刺さる。
夜に滲むふたりの境界
社会の速度についていけず、少しだけ取り残されたような感覚を抱えた健介と紗花。彼らが夜間大学の研修室で寄り添う姿には、恋愛よりももっと原始的な救いが潜んでいる。
紗花が紺色のワンピース越しに健介へ身を寄せる瞬間、読者はその情緒と熱に引き込まれるはずだ。触れあうたび、世界の輪郭がやわらかく溶けていく。
百済児廿日の筆は、大胆さよりも静かな衝動を描き、その静けさが逆に濃度を増していく。大人の読者ほど、この瑞々しい夜の温度に心を奪われるだろう。


